墨
黒は一色ではない。
青・赤・紫・漆黒、その強さの度合いによって無限の色を含んでいる。
学生のときに聞いた言葉。
未だに赤・紫の二つしか見えていない。
雪心(墨運堂)
栄豊斎にて購入。
天衣無縫(呉竹精昇堂)
最も気に入っている墨のひとつ。
程々の濃度で使うと、紫紺色が出て華やか。
書芸呉竹(呉竹精昇堂)
廉価な墨。
深い黒色で、とても使いやすい。
どの墨を使うか迷った時は、これか「玉品」をつかう。
名筆三十選 呉昌碩墨(呉竹精昇堂)
栄豊斎にて購入。
大学3年次に、呉昌碩という響きにつられ、奮発して買ったもの。
非常に赤みの強い墨。
やや濃いめで使っても、薄めで使っても様になる。
黄山松煙(老胡開文)
博鳳堂にて購入。
やや古いもの。
店では文革前のもの、といっていたが、「老胡開文」は解放後の名前。
一般的に、黄山松煙は癖がなく使いやすい、というが、この墨は大半の紙では色が出ない。
薄口の、柔らかい、よく墨を吸う紙で、濃度を細かく調整すると、落ち着いた、深い黒を出すときがある。
玉品(墨運堂)
書芸呉竹と同じく、廉価な墨。
どこにでも売っているので惜しむことなく使える。
嫌味のない艶があり、重宝している。
仿古・九子墨(方于魯)
博鳳堂にて購入。
色は出ないものの、凝った意匠を気に入っており、取り出しては手にとって眺めることが多い。
酔墨淋漓(曹素功)
中国の新墨にしては珍しく高品質な墨。
価格は日本の廉価なものとかわらない。
大学一年生のとき初めて買った唐墨が、この酔墨淋漓の大きいもの。
墨は香りがよく、黒々とした色を出すもの、と思っていたのに、香りもなく、思ったほどの黒さも出ず、不満に思いながら使っていた。
先生方に「いい墨だ」といわれながら使い続けているうちにようやくその味わいに気づいた。
派手さはないが、ほんのりと赤みがさす、おだやかな墨色が気に入っている。